はじめに
本記事に言う「ロードマップ」とは、私が労働法を学び始めてから司法試験を受験するまでに履修した授業・使用した教材・採用した勉強法を時期ごとに解説したものです。一受験生が初学者からどのように労働法を勉強してきたかというありのままの事実を述べます。
それに続く「合格後の振り返り」は、「ロードマップ」についての評価として、良かった点や理想に近づくための改善点を述べたものです。
実際にやってみて有益だと感じたものについては詳細記事のリンクを付していく予定ですので、気になったときは是非別記事に飛んでみてください。
ロードマップ
京都大学法学部
1回生
初めての履修登録で勝手もわからない中、先輩方からの評判も良かったことから、小畑史子「労働と法」(京都大学,2014年度前期)を履修しました。
専門科目ではなく一般教養科目である上、楽単(楽に単位が取れる科目)との噂も聞いていたのですが、真剣に取り組むと結構対策に時間がかかる科目だったように思います。
小畑史子=緒方桂子=竹内(奥野)寿『労働法(有斐閣ストゥディア)』(有斐閣,2013)(※2019年に第3版刊行)に基づいて授業が進められます。
期末試験の問題が章末問題から出題されると予告されていたため、同じクラスの受講者で分担して回答案を作成し、グループLINEで共有していました。

この授業を通してひととおり労働法に触れたことで、1回生でも労働法の全体像をイメージすることが出来ました。
2回生
労働法には全く触れていません。
3回生
労働法には全く触れていません。
4回生
労働法には全く触れていません。
京都大学法科大学院
2年次前期
学部で「労働と法」を履修しており馴染みがあった等の理由から、京都大学法科大学院入学直前に、司法試験の選択科目を労働法にすると決めました。
なぜ労働法を選択するに至ったのかについての詳細は、選択科目の選び方(詳細記事掲載予定)をご覧ください。
入学後すぐ、BEXAにて、①労働法速修テキスト講義、②労働法論証集講義、③労働法過去問完全攻略講義の3講義から構成される労働法完全対策パックプランを購入。
島田裕子「労働法1」(京都大学法科大学院,2018年度前期)(※履修取消)と並行して、加藤喬「労働法速修テキスト講義(第2版)」(BEXA,2017)(詳細記事掲載予定)を1周聴講しました。
ただ、後に公表された期末試験の日程が基幹科目の「民事訴訟実務の基礎」と同日(かつ連続)であったこと、及び、知識の定着度からしてあまり良い点数が望めないと判断したことから、「労働法1」は履修を取り消すこととなります。

2年次夏休み
サマークラーク3つと労働法以外の勉強会(司法試験論文式試験(改正民法)対策勉強会(ロー2年次夏休み・討論型・6人)(詳細記事掲載予定)・司法試験論文式試験(選択科目以外)対策勉強会(ロー2年次夏休み~3年次・演習型・8人)(詳細記事掲載予定))に追われ、ほとんど労働法に充てる時間をとれませんでした。
2年次後期
小畑史子「労災補償と労働者福祉」(京都大学法科大学院,2018年後期)を履修していましたが、一部を除き、分野として司法試験での出題可能性は低いです。
授業メモのうち答案に反映できそうな箇所のみ速修テキストに転記しながら受講。
他の労働法系の科目は司法試験直前の3年次でまとめて履修することに決め、基幹科目に専念しました。
2年次春休み
スプリングクラーク4つとエクスターンシップに追われ、ほとんど労働法に充てる時間をとれませんでした。
3年次前期
前年度に取り消していた島田裕子「労働法1」(京都大学法科大学院,2019年度前期)を改めて履修しました。
このタイミングで村中孝史=荒木尚志編『労働判例百選(第9版)(別冊ジュリスト No.230)』(有斐閣,2016)(詳細記事掲載予定)を使い始めます。
授業で扱われる判例については、百選の事案部分及び判旨部分を授業前に必ず確認するようにしていました。
同時並行で、百選との対応関係及び授業メモのうち答案に反映できそうな箇所のみ速修テキストに転記しながら、加藤喬「労働法速修テキスト講義(第2版)」(BEXA,2017)の2周目を聴講しました。
この期間で労働法の基礎力を高められた一番の要因は、速修テキストだけでは理解が困難であった箇所や改正箇所について島田先生に逐一質問して疑問を解消するようにした点にあったと思います。
授業終わりに毎回のように質問しに行っても、嫌な顔一つせず丁寧に回答してくださった先生には、感謝しかありません。
3年次夏休み
司法試験論文式試験 選択科目(労働法) 過去問(詳細記事掲載予定)について、問題文を読む→余白に軽く書くべきことをメモ→すぐに加藤喬「労働法過去問完全攻略講義」(BEXA,2017)(詳細記事掲載予定)を受講という流れで過去問を全年度1周しました。
メモに留めたのは、基本七法と異なり、知識量も書き方も定着していない段階で3時間計って答案を書いても時間の無駄になるだけであるとの判断からです。
3年次後期
改正の反映されたシケタイが出版されたことから、速修テキスト講義の抜け漏れを確認する意味で伊藤真『労働法 (第4版)(伊藤真試験対策講座14)』(弘文堂,2019)(詳細記事掲載予定)を購入しました。
また、こちらも改正対応の新版が出たということで、辞書用に菅野和夫『労働法(第12版)(法律学講座双書)』(弘文堂,2019)(詳細記事掲載予定)を購入しました。
履修した労働法関連の科目は、村中孝史「労働法2」(京都大学法科大学院,2019年度後期)・竹林竜太郎「労働法事例演習」(京都大学法科大学院,2019年度後期)・鎌田幸夫「労使関係と法」(京都大学法科大学院,2019年度後期)の3つです。
また、空きコマを利用して、司法試験論文式試験(労働法)対策勉強会(ロー3年次後期・討論型・6人)(詳細記事掲載予定)を組みました。
選択科目が同じ人に関しては履修している授業も被ってくるので、空きコマを容易に合わせることが出来ます。
勉強会の前には、司法試験論文式試験 選択科目(労働法) 過去問の問題文を読む→余白に軽く書くべきことをメモ→すぐに加藤喬「労働法過去問完全攻略講義」(BEXA,2017)を受講という流れをもう一度繰り返していました。
勉強会の獲得目標として私が掲げていたことは、過去問完全攻略講義で解説された内容への疑問が出てきた場合に、内容の正確性だけでなく答案政策上割り切るべきポイントなどを詰めて議論することです。
3年次春休み
労働法速修テキスト講義、労働法過去問完全攻略講義、シケタイ、菅野労働法を中心に復習。
TKC 司法試験 全国統一模試 第1回(伊藤塾,2019)(詳細記事掲載予定)の直前には、竹林竜太郎「労働法事例演習」講義レジュメ(京都大学法科大学院,2019年度後期)(詳細記事掲載予定)や鎌田幸夫「労使関係と法」講義レジュメ(京都大学法科大学院,2019年度後期)(詳細記事掲載予定)も軽く1周復習していました。
私はTKC模試のみを受験していたので、辰已・司法試験全国公開模試(辰巳法律研究所,2019)(詳細記事掲載予定)のみを受けていた人と問題を見せ合って司法試験に備えました。
修了後~司法試験
新型コロナウイルスの影響により、司法試験が5月から8月に延期される旨が公表されました。
京都大学法科大学院の自習室や図書館も利用不可となってしまったため、司法試験直前期LINE通話勉強会(ロー修了後(2020年4月~8月)・演習型・5人)(詳細記事掲載予定)を組むことで勉強への強制力をはたらかせていました。
試験直前に新しい教材に手を出すべきでないというのが定石ですが、このときばかりは。中だるみ解消のためのエンジンとして新しい基本書・演習書の使用を決意しました。
新しく使い始めた基本書は、司法試験考査委員でもある水町先生のご著書である水町勇一郎『労働法(第8版)』(有斐閣,2020)(詳細記事掲載予定)です。
新しく使い始めた演習書は、同じく水町先生が編著者として名を連ねる水町勇一郎=緒方桂子編著『事例演習労働法(第3版補訂版)』(有斐閣,2019)(詳細記事掲載予定)です。
今まで分かりにくかった分野について理解が進む記述に度々出会うことができ、結果的にこの2冊の採用は正解だったように思います。
超直前期のヤマ張り(他の人が出題を予想しているであろう論点で書き負けないようにするための対策)には、以下の教材を使用していました。
TKC 司法試験 全国統一模試 第1回(伊藤塾,2019)(詳細記事掲載予定)
辰已・司法試験全国公開模試(辰巳法律研究所,2019)(詳細記事掲載予定)
TKC 司法試験 全国統一模試 第2回(伊藤塾,2020)(詳細記事掲載予定)
『Hi-Lawyer 2019年4月号』(辰巳法律研究所,2019)(詳細記事掲載予定)
『Hi-Lawyer 2019年6月号』(辰巳法律研究所,2019)(詳細記事掲載予定)
『Hi-Lawyer 2020年4月号』(辰巳法律研究所,2020)(詳細記事掲載予定)
『Hi-Lawyer 2020年6月号』(辰巳法律研究所,2020)(詳細記事掲載予定)
『Hi-Lawyer 2020年夏号』(辰巳法律研究所,2020)(詳細記事掲載予定)
合格後の振り返り
良かった点
労働法特有の専門用語の理解
入門的な授業である小畑史子「労働と法」を受講していたことが、司法試験労働法に取っつきやすくなった大きな要因であったように感じます。
どの科目においても、まずは入門書(解説講義があればなお良い)によって条文や科目特有の専門用語に慣れ親しんでおくことが重要です。
特に選択科目は、司法試験が近づいてきてから初めて勉強する人も多いように思います。
限られた時間の中で労働法を司法試験レベルに持っていくためには、遠回りに見えたとしても、最初に薄い本で全体を理解してからステップアップされることをお勧めします。
他大学から来たロー生に聞いてみると、入門書としては森戸英幸『プレップ労働法(第6版)(プレップシリーズ)』(弘文堂,2019)のシェアが高かったと答えてくれた人が多かったです。
読んだことがないため詳細記事にはしませんが、ぜひ参考にしてみてください。
改善点
過去問・答案例をより早いタイミングで
司法試験過去問や過去問完全攻略講義の答案例をもっと早くに見ておけばよかったなと思います。
「もっと早く」というのを具体的に言うと、労働法を本格的に学び始める一番最初の段階(私で言うとロースクール2年次前期)です。
私は3年次夏休みに初めて見たのですが、本腰を入れて勉強し始める前に直近1年分でもよいので目を通しておくと、ゴールを見据えての勉強がしやすくなる気がします。
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