【聖夜の裏側】クリスマス夜勤バイトでいちご嫌いになった話

司法試験後

はじめに

YMオンエア
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何か話のネタになるアルバイトをしたい!

暇を持て余していた11月下旬、ひょんな動機でクリスマス関連の単発バイトを探していると、とあるケーキ工場の求人を見つけました。

勤務時間夜9時~朝9時

12月21日~23日の内から2日を選択(3日連勤も可能)

時給1300円(夜10時~朝5時は深夜割増込みで1625円

夜勤で12時間…。

しかも最低2日…。

時給が良いとはいえ、夜勤が初めての私は正直迷いました。

ただ、夜通しケーキを作った経験がある人もなかなかいないし、経験しておけばおもろい話が出来るに違いない。

その一心だけで応募ボタンを押しました。

面接はライアーゲーム

まさかの面接あり。

オンライン面接が当たり前になってきているこのご時世にもかかわらず、辺鄙な工場まで足を運びます。

人身事故で電車が1つ手前の駅で止まってしまうハプニングに見舞われ、走って冬なのに汗だくで工場に到着。

入場の際には検温・手洗い・うがいが求められます。

ウォータークーラーから出てくる水にはうがい薬が入っており、さすが食品工場といった感じです。

休憩室で待機するように指示され、テレビや自販機の置かれた部屋に入ります。

そこには流れているテレビ番組に目もくれず、ソファにぐったりと座って睡眠をとる作業着姿の従業員の皆さん。

面接前ですが帰ろうかと思いました。

徐々に私服姿の人が集まってきたので、おそらくこの人達は同じく面接を受けに来た方々であろうと気が付きます。

年代は学生らしい人からおじさんおばさんまで様々。

それにしても私服といい髪型といい、今までのアルバイト面接では経験したことがないほど個性的な人が多かった印象です。

社員さんの案内で連れて行かれた部屋に集合した際の様子はライアーゲームのルール説明かと思いました。

フクナガに似た派手服おかっぱ黒縁メガネの若者から和製トレローニー先生まで。

(※『LIAR GAME』や『ハリー・ポッター』をご存知でない方は是非ご視聴ください。)

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そんな状況ですが全員に向けて給与の振込方法等の各種説明がなされたことから、面接はよっぽどのことがないと弾かれないものだろうとの察しがつきました。

配られた資料に目を通し、個人情報の記入などを進めていきます。

手慣れた様子でどんどん説明が進んでいく中、契約書の片隅に社員さんからの説明にはなかったある1文が。

「求人募集の際の条件からプラン変更をご希望の方は、社員までご相談ください。」

注意深く書面に目を通していたおかげで見逃しませんでした。

インターンの課題でやった契約書レビューがこんなところで活きてくるとは。

もともと22日には予定が入っており、21日・23日の2日間で応募していた私ですが、早速21日のみに出来ないかと個別に尋ねてみました。

すると、インターネット求人では記載がなかったものの、実は21日のみでもOKかつ夜9時~朝6時までというプランがあるとのこと。

やはりケーキ工場としても人手が必要な時期だからでしょうか、そのプランは尋ねられるまで公にならないようでした。

休憩室の様子に怖気づいてしまっていた私は迷うことなくプラン変更を申請。

この行動が究極のファインプレーだったことに、まだこの段階では気付いていません。

全体説明に引き続く面接では、整髪と爪の長さが確認され、「それじゃ当日は1時間前の夜8時集合で、よろしく。」とのこと。

こうして、私は初めての夜勤、初めてのケーキ作りアルバイトをすることとなります。

アルバイト前半戦(20:00-1:00)

諸説明・着替え(20:00-21:00)

バイト当日、集合場所に到着すると、社員さんが各々の体格を見て制服や帽子を渡してくれます。

全体説明の会場に集まった人数はざっと50人ぐらいでしょうか。

提出書類の回収、注意事項説明などが済むと、着替えて各勤務フロアに移動します。

制服は一般的な白色の作業着・作業靴で、不織布の帽子とマスクを着用の後、ストッパーの役割も兼ねて青いキャップをかぶるのが通常のスタイルです。

キャップの前面に名札が付けられており、社員さんがアルバイトに指示を出しやすいようになっています。

私の勤務フロアである5階に移動する直前、廊下を歩いていると、1階の説明が聞こえてきました。

「このフロアは他のフロアと比べて圧倒的に寒いので、防寒着を配布します。」

またまた強運が発動。

真夏生まれで寒がりな私にとって、寒さは一番の敵です。

たまたま5階に配属されましたが、おそらく5階はあったかいのだろうと胸をなでおろしました。

ただ、実は5階も5階で魔のフロアだったのです。

悪夢のヘタ取り(21:00-24:00)

製造現場に入る直前には、ジェット噴射によるホコリ除去→手洗い・うがい→アルコール消毒→いわゆるコロコロによるホコリ除去→専用の部屋に入ってのジェット噴射→手洗い→コロコロ→アルコール消毒→ゴム手袋着用→アルコール消毒。

これでもかというほど入念な衛生管理がなされます。

この工程を繰り返すのはあまりに面倒なので、休憩時間までトイレに行かないことを決意しました。

製造現場に入ると、そこには既に夜8時~朝8時のシフトで働く人達の姿が。

手元の動きを見て、遠目でもこれから自分たちがやる仕事内容がすぐに分かりました。

いちごのヘタ取りです。

事前に聞いていた説明では、生クリームのかき混ぜやケーキにいちごをのせていく作業などが例示されていました。

でもたしかにヘタが付いたままいちごをのせるわけにはいきません。

私のクリスマスケーキ作りは、下処理から始まることになります。

ひととおり説明を聞き終えた頃に気付いたのですが、既にもう寒い。

ここは、優先順位が「働きやすさ<いちごの鮮度」の世界です。

屋内にして屋外の寒さでした。

ダンボールから縦5個×横6個、合計30個のいちごが入ったパックを2つ取り出し、ヘタを取っては専用のバット(いちごを入れるための平たいケース)に移していきます。

もちろんダンボールを触った後には、アルコールスプレーでいちいちしっかりと消毒。

このアルコールが揮発することで寒さにさらに追い打ちをかけます。

2人1組のペアで作業をするので、相手よりも作業が遅いと相手にこちらのパックの残りを手伝わせてしまうことになります。

これが良く出来たシステムで、サボったり、(なかなかいないとは思いますが)勝手に食べたりすることの抑止力になっているのです。

私の相手が8時から作業をしていた方だったため圧倒的に作業が早く、私はそのプレッシャーと戦いながらのスパルタいちごヘタ取りとなりました。

ただ、思っていた以上にいちごのヘタ取りスキルは頭打ちが早く、30分ほど作業をすればだいたい同じ速さまで追いつくことが出来ます。

最初の頃はまだ余裕もあり、3600個ぐらいまではヘタを取った数を頭の中で数えていました。

しかし、ここで心の折れる出来事が。

高級いちご「あまおう」の襲来です。

普段であれば喜ぶべきこの出来事。

ただこのあまおうは、普段スーパーなどでよく見かけるいちごパックのようにいちごがバラバラに積み重ねられているタイプでした。

一目で1パック30個とわかる今までの品種と違い1パックあたりの数が数えにくくなっているのです。

このブログでヘタ取り総数を発表するという目標はあえなく潰えてしまいました。

それにしても、同じケーキに色んな種類のいちごがのっているという事実は初めて知りました。

あくまでこの会社のケーキに関してだけなのかもしれませんが。

調達コストを考えると品種を揃えたほうが良いようにも感じるのですが、供給量が足りないのか、不作の場合のリスクヘッジなのか。

とにかく新しいバイトはこういった発見があると楽しいですね。

なんて言ってられるのも最初のうちだけで、だんだん頭がおかしくなってきます。

作業が単調すぎて思考停止してくるので、逆に考えすぎると嘘みたいに動作が変になるのです。

いちごをヘタ入れの方に投げそうになったこともあります。

検証系Youtuberのごとくどの段階で頭がバグるか検証しようと思っていたのですが、時計が無いため時間もわかりません。

自分は休憩まであとどれぐらい働けばよいのか、何もわからないまま限界を迎え始めていた頃、ちょうど社員さんから作業中断の指示がありました。

「0時から1時まで1時間の休憩とします。」

第1次頭バグり期は24時という検証結果です。

まだ実質3時間しか働いていないという事実に驚愕しました。

ただ、休憩に入れることが嬉しすぎて一時的に疲れは吹き飛びました。

15分に感じる1時間休憩(0:00-1:00)

製造現場ゆえ他のアルバイトの人と話すこともなかったため、どうせ休憩場所の食堂でも1人で過ごすのだろうなと思っていました。

ただ、私の近くにいた方々は運良く皆さん愛想の良い人ばかりで4人で一緒に話しながら軽食を食べました。

自社製品は無料で食べられると事前に聞いていたのでバイト前にお腹を空かせて意気込んでいたのですが、疲労からか全然喉を通りません。

そんな中でも、同じ苦行を共に味わった4人ゆえ会話も弾み、お互いの境遇や将来の話など、様々なことを語り合いました。

ふっと時計を見ると既に0時50分。

あっという間の休憩時間が終わり、4人は「ファイトー!いっぱーつ!」の掛け声(古い)とともにあの入念な衛生管理工程へと移るのでした。

アルバイト後半戦(1:00-6:00)

悪夢再び(1:00-2:30)

タイトルからもわかるとおり、そうです、ヘタ取りです。

4人の談笑の中で製造現場に実はちゃんと時計があったことを知り、そろそろ1時間ぐらい働いたかなと思ったところで見てみました。

時計が指し示していたのは1時12分。

絶望です。

時計を気にしだすと、一気に時間が立つのが遅くなりはじめました。

やっとの思いで2時を過ぎた頃、やはり休憩時間はしっかり寝るべき時間だったのだとの後悔が頭を埋め尽くします。

睡魔と後悔以外の感情は無くなっていました。

おそらく第2次頭バグり期はこの2時というタイミングだったように思います。

明らかに耐えられる時間が短くなっていることがわかります。

そこから約30分、まさに悪夢の時間でした。

朝6時までずっとこのままなのか、永遠に続く暗く長いトンネルのように感じるとはまさにこのことです。

指先→腕→ふくらはぎ→腰の順でむしばまれていた身体とともに、メンタル的にも本当に限界を迎えかけていた頃、社員さんの甲高い声が現場に響き渡ります。

「こちらのレーンの方1回ヘタ取りやめましょか~。」

私のいたレーンです。

朦朧としていた意識が一気に回復していきました。

もうひとレーンのアルバイトの方々がこちらを見る目の怖さたるや。

私達は一度1階に移動し、生クリームが塗られたケーキの入った大量のケースを5階まで運びました。

単純作業から解放される喜びがこんなにも大きいものだとは。

ついにヘタ取り以外の仕事が始まるのです。

ここでヘタ取り脱出記念に、取り扱った数々のいちごの中から、独断と偏見に基づく「ヘタの取りやすいいちごランキング」をご紹介します。

はっきり言って役立ちません。

※もちろん個体差もありますし、あくまで意識飛びかけのアルバイトが勝手につけたランキングとしてご笑覧ください。

第3位 ゆうべに

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第3位は、熊本県産の「ゆうべに」です。

取り扱ったパックにはくまモンのイラストが描かれていました。

果肉が柔らかいせいなのか、糖度が高いせいなのか、原因は不明ですが、底の方が傷んでいるものが多かったです。

裏を返すと、ヘタ取り部隊が傷んでいるものをしっかり取り除いたいちごは、とても美味しいということなのかもしれません。

第2位 あまおう

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第2位は、福岡県産の「あまおう」です。

言わずと知れた高級いちごですが、ヘタの取りやすさも高評価です。

第1位よりもヘタの部分がバラけやすいという少しの難点から惜しくも第2位に。

第1位 ゆめのか

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栄えある第1位は、長崎県産の「ゆめのか」です。

今まで食べたことがなく味は全くわからないのですが、この品種はヘタ取り界を救います。

あまり力を入れずとも、ヘタが丸ごとスルッと取れるのです。

こんな形で生産者さんに感謝する日が来るとは思いませんでした。

気になった方は是非一度ご自身の手でヘタを取ってご賞味ください。

私はしばらく食べません。

見えた光も束の間(2:30-6:00)

生クリームが塗られたケーキは、私達にとって希望の光でした。

新しいお仕事、ライン作業が始まります。

スーパーなどで、プラスチックケースに8等分されたホールケーキ2ピース分が互い違いに入った商品を見たことがあるのではないでしょうか。

その前身、ショートケーキのいちごのってないバージョンが2ピース入ったケースが大量に運び込まれました。

程なくして、部屋にウィーーーンという音が。

今まで作業机だと思っていたヘタ取り場所は実はベルトコンベアーだったのです。

ライン作業は、ケースの蓋を開ける→いちごをのせる→粉糖をかける→蓋を閉める→商品名や成分表示等が書かれたセロハンを貼る→サンタやトナカイの絵が描かれたワンポイントシールを貼る、の6工程あります。

ひととおり説明が終わると、社員さんが適当に配役を決めていきます。

なんと私のメイン担当はセロハン貼り。

セロハンがくちゃくちゃになるなど一番トラブルが多いパートだそうです。

ただ作業が始まってすぐ、ほんの少しだけ几帳面な性格のおかげでこの仕事が得意であると実感しました。

また、目の前のいちごに黙々と立ち向かっていた時間とは大違い。

ベルトコンベアーで作業に動きがあるだけでこんなに気が楽に感じられるのかと正直驚きました。

気づくと時計は3時半。

ヘタ取りよりも明らかに時間の流れが早い。

これならいける、と確信したのも束の間、やはりそう甘くはありません。

セロハンやワンポイントシールは、機械がロールを回して自動で1枚ずつ送り出してくれます(そこまで出来てなぜ貼るところまで自動化できないのかはさておき)。

今までの時間は、ロールが無くなる度に機械もベルトコンベアーも止めていたため、その時間でアルバイトが休憩できていました。

ただ、アルバイトが成長して作業効率が上がるのと同様に、機械を管理してくれる社員さんの腕も上がります。

なんと社員さんが、機械を止めずとも新しいロールに交換する術を身につけてしまったのです。

こうなってくると休憩という概念がなくなります。

私達はロールが無くなりかけるタイミングで何度も祈りを捧げ、社員さんの交換ミスを願いました。

しかし、いくら祈れど願いは届かず、少なくとも3時間はぶっつづけで作業し続けました。

第3次頭バグり期は、ラスト1時間を迎えた5時です。

1時間といえばラストスパート感が出ますが、立ちっぱなし働きっぱなしの状態でのラスト1時間の長さは桁違い。

今までの経験から、その1時間の長さを想像して怖くなったのが5時でした。

結局その1時間の記憶はほぼありません。

ヘタ取りの最後の方と同様にもはや何も考えていないのです。

寒すぎて眠たくもありません。

「契約が6時までの人はこれで終了となります。おつかれさまでした。」

神様…。

「9時までの人はこっちに集合してください。」

9時までのアルバイトの方々がこちらを見る目の怖さたるや。

こうして私は朝焼けを見ながら家路につくのでした。

おわりに

今回のアルバイトは、肉体的にも精神的にも、自分史上最も過酷なアルバイトでした。

ただ、アルバイトの方々も社員さんも含めて、この人達がいなければスーパーにケーキが並んでいないんだと身を持って体験したことで、働いてくださっている方々への感謝に深みが出たように感じます。

世の中には、もっと大変なお仕事、もっと安くても働かざるを得ない方々、自分の知らない世界がたくさんあると思います。

働き方の問題、食料廃棄問題などの社会問題について考えさせられるきっかけにもなったので、アルバイト代以上の経験が出来たのではないでしょうか。

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