はじめに ~模試を受ける上での心構え~
「模試は本番だと思って、本番は模試だと思って受けてください。」
これは私が大学受験の際に塾の先生から言われた言葉ですが、司法試験についても同じ心構えでいることが有益だと思います。
模試だからといって気を抜かず、司法試験本番でこの問題が出たらどう食らいつくかを考えながら真剣に向き合って欲しいです。
また、たとえ出来が悪くても悲観しすぎず、たとえ出来が良くても慢心しすぎないということも重要な心構えだと思います。
あくまで自分の現状を把握し、本番にピークを持ってくるための模試です。
この模試を最大限に有効活用して、司法試験合格に繋げてください。
模試の活用法
私は、「TKC 司法試験 全国統一模試(伊藤塾,2020)」を会場で、新型コロナウイルス感染症の影響による5月から8月への司法試験延期決定後に実施された「TKC 司法試験 全国統一模試 第2回(伊藤塾,2020)」を在宅で受験しております。
本記事では、「2021年 TKC 司法試験 全国統一模試」と同じく3月に実施された前者を受験した際の経験に基づき、5つの活用法をご紹介します。
①本番のシミュレーションを行う
会場受験の方はもちろん、オンライン受験や在宅受験の方についても本番と同じ時間帯で受験し、試験本番の緊張感や休憩時間・中日の使い方などを綿密にシミュレーションすることを勧めます。
私は実際に受験してみて、意外と休憩時間に見返せる資料が少ないことがわかり、本番で最低限見直しておきたいポイントを絞ることが出来ました。
マスクを装着した状態での起案も、未経験の方はこの機会に試しておいてください。
試験会場が本番と同じ場合には、会場までのルートやどこでお昼ご飯を買うかなども同時にチェックしておくと良いでしょう。
②本番での再度の出題に備える
2021年 TKC 司法試験 全国統一模試の紹介サイトに記載されているとおり、伊藤塾が「本試験はもちろん、学会の議論の状況や考査委員の関心事項、判例の動向、さらには本試験の出題に関する意見まで、様々な情報を総合的に分析・検討して新作」した問題である以上、司法試験本番で出題される可能性も大いにあります。

また、実受験者No.1ともいわれるTKC模試で出題された問題は多くの受験生が復習しているであろうことから、再度出題されても書き負けないぐらいに復習しておくことが必要と言えるでしょう。
論述検討講義なども参考にしながら、模試の問題を抽象化して再度の出題に備えてください。
③受験後反省点をまとめて勉強計画を見直す
模試を受け終わったらすぐに、受験後反省点を各科目ごとにまとめておくと良いでしょう。
この記事の最後に、実際に私が2020年3月に模試を受けた直後(4日目の短答終了後その日の内に)作成した受験後反省点をあくまで一例として掲載してあります。
添削が返ってきてからでは模試を受験した当時の記憶が薄れているとともに本番(新型コロナウイルスの影響による延期前日程)までの時間が相当タイトという感覚でした。
4日間の模試を受け終わって疲労困憊だと思いますが、可能な限り早く本番に活かせる形で模試を振り返ることをおすすめします。
④受験後反省点を本番直前に見返す
受験後反省点には、自分が一度間違えた箇所や苦手な箇所が集約されているはずです。
模試で間違えた内容が本番で再度出題された際に、二度目は間違えないよう直前確認してください。
⑤辰巳・司法試験全国公開模試の受験生と問題を見せ合う
TKC 司法試験 全国統一模試 (伊藤塾,2019)と辰已・司法試験全国公開模試(辰巳法律研究所,2019)の両方を受験している方もいましたが、私の周りではいずれか一方のみを受験している人が多かったように思います。
私は辰巳法律研究所の模試のみを受験した友人と問題を見せ合い、出題された論点を確認していました。
筆者の受験後反省点まとめ
令和2年司法試験対応TKC全国統一模試 受験後反省点
【総論】
・1日目、3日目はだいたい7時発、2日目、4日目はだいたい7時半発
・宝塚~梅田~本町(3番出口安土町方面)→徒歩(途中でコンビニに寄る)
・チョコレートとこんにゃく畑を持って行き、コンビニで綾鷹とおにぎり3個を買う
・時計及びストップウォッチの確認
・ボールペンは各科目新品の状態からスタート
・空調への対処
・毎時間必ずトイレに行く
・1日目、2日目は両腕・両足に湿布
・失敗してもすぐに切り替える
・直前にあまり復習できないため、付箋等で確実に見返す分野を絞る
・答案構成用紙は使わない
・記載ページを間違えない
・まず配点で時間と答案枚数を按分→設問を見る
【1日目】
労働法
直前確認:
労働者性(労基法、労組法)、使用者性(労組法)、労働条件の不利益変更(就業規則(条文に無い4つの考慮要素)、労働協約)、賃金計算、同一労働同一賃金、解雇権濫用の考慮事項
・条文の要件に細かくあてはめすぎて時間ロス
→条文の素読・内容要約
・第1問と第2問のバランス
→第1問の時間配分の上限は100分(4ページに収まるよう注意)
・答案構成の省略
→あてはめで使えそうな事情は横に要件や考慮事情を明記
・時間への着目
→労契法18条「5年を超えない」
・救済の整理
→救済命令や仮処分まで
・不法行為に基づく損害賠償請求の書き方を確立
→権利侵害・過失・賠償範囲
・細かい論点を忘れない
→不当労働行為意思の要否及び内容
憲法
直前確認:
法律と条令の関係、政教分離(白山比咩神社、空知太)、漠然不明確、過度広汎、検閲、北方ジャーナル、薬事法、財産権の導入、証券取引法、成田新法
・判例の知識不足
→百選、基本権Ⅰで最低限規範は完璧に(薬事法判決、証券取引法判決の読込み)
・時間配分
→財産権の場合、損失補償にかかる時間を考慮しておく
・不要な場合分けで時間ロス
→結論を無理に分かれさせようとせず、無駄な場合分けをしない
行政法
直前確認:
処分性、原告適格、訴えの利益、社会観念審査+判断過程審査、裁量基準、違法性の承継、法律と条令の関係、各種抗告訴訟の訴訟要件、各種仮の救済の訴訟要件
・時間配分
→原告適格が出題されている場合や、設問4まである場合は特に注意(配点で時間配分)
・条文の見落とし
→個別保護要件の根拠をくまなく探す
・裁量基準
→検討手順をパターン化
・実質的当事者訴訟
→確認の利益の検討手順をパターン化
・自主条例と委任条例の区別
→法律と条令との関係を整理
【2日目】
民法
直前確認:
債権者代位、詐害行為取消、侵害利得、給付利得、転用物訴権、不法行為、事業執行性
・表見代理の整理
→112条2項の書き方
・715条
→事業執行性を厚く書く
・集合動産譲渡担保
→民法総合3、民Ⅱレジュメ確認
商法
直前確認:
成立前の会社、見せ金、設立、有利発行、特別利害関係、競業取引、利益相反取引、任務懈怠責任、第三者責任、事業譲渡の定義、合併
・手続問題で時間を取りすぎない
→最低限書いて時間が余ったら戻ってくる
・重要財産処分、有利発行落としがち
→額に着目
・認定ミス
→競業取引、利益相反取引の整理
民事訴訟法
直前確認:
処分権主義の趣旨と定義、弁論主義の趣旨と定義、既判力の趣旨と定義、各種複雑訴訟の要件
・要件事実に沿った検討
→大島第3版まとめ確認
・問いに答える
→誘導に乗る
・手続問題は条文へのあてはめを重視
【3日目】
刑法
直前確認:
不作為犯の処理、間接正犯の処理、因果関係の理由付け、原自行為、誤想過剰防衛の処理、共同正犯の処罰根拠と要件、詐欺、横領、背任、文書偽造、賄賂
・第1問で書きすぎ
→書けるときこそコンパクトに収める意識
・問題文をよく読む
→住居侵入や特別法違反が除かれている場合に注意
・だまされたふり作戦
刑事訴訟法
直前確認:
強制の処分、比例原則、逮捕に伴う無令状捜索差押え(緊急処分説、相当説)、おとり捜査の定義、訴因変更の要否・可否・許否、自白法則、伝聞法則、違法収集証拠排除法則
・時間配分
→捜査の適法性のあてはめで時間を使いすぎない、証拠の用法が複数ある場合に注意
・実は理論面でも差がつく
→規範を正確に素早く書く
【4日目(短答)】 最初は民法!!!
→全体的に短答の勉強が不十分、比重を上げる
民法
直前確認:
制限行為能力者、意思表示の瑕疵、担保物権、家族法
・時間配分に注意
憲法
直前確認:
統治の数字がらみ
刑法
直前確認:
執行猶予、各論
・時間配分に注意
関連情報
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